サラヘル


三度目の正直も叶わなかった。
ヘルガの云っていた事は本当だったのだ。

ふらりと私の研究室をヘルガが訪れてきたのは遡ること一時間前。




「『愛の妙薬』の作り方を教えて欲しいの」

頼まれたモノにそぐわない鬼気迫った表情に違和感を覚えつつも、普段ならとことん調べ尽くして自力で切り抜ける彼女が自分から物事を依頼してきたと云う方が存外の驚きだった。それが『愛の妙薬』などと云ったお世辞にも難しいとも思えない薬なら尚のことだった。いくら彼女が薬学を不得手としていても調合出来ない筈は無かった。

話を訊くと、どうやら自分の寮生にせがまれて断れなかったようだ。
尤も、あの世話好き振りから想定するに満更嫌でも無かったのだろうが。

「それでね、本に書いて有る通りに何度か試みたのだけれど、どう見ても色からして失敗しているのよ。」

そんな馬鹿な事があってたまるものか。書いてある通りに作って出来ない訳が無いのだ。どこか課程が抜けているか、調合する薬品の分量を間違えているのかその辺りに違いない。そう高を括って彼女に研究室を明け渡し、再度私の前で作らせたのだ。


それがこれで三回目。
また黒い煙を吐き散らしながら本来の色とは程遠い液体が出来上がった。彼女が当初云っていた通り、不審な点は見当たらなかった。

一瞬、薬学嫌いが高じて、彼女の体から目に見えない調合を邪魔するような何かが放出されているのでは、と思いたくなった。勿論そのような非論理的なことなど本気で信じる積もりもないのだが。



結局薬は今回だけ、と云う事で私が代わりに作ってやる事にした。






毒電波発するヘルさんが描きたかっただけです。

薬学…好き嫌いとか向き不向きは合っても努力を怠らなければ「新しく薬品を開発する」事は出来なくても「本を見て調合する」位の事は出来る筈だと思うのです。でもヘルさんには調合も出来ないような人であって欲しいと…。ちなみに同じ「調合」でも食べ物の調合(調理)は滅茶苦茶得意なんですよ。

ところで…ヘルさんは「お淑やかに」を崩さないように描こうと今迄きた訳ですが…なんかこのヘルさん「ぐぅっ…!!」とか横に手書き文字で入れてあげたいような雰囲気に感じるのは気のせいですか。

余談ですが、サラがわざわざ薬を作ってやる事にしたのは相手が他でもないヘルだからです。これがゴドだった日には相談に来られても「ふんっ」とか無視されて終わりです。流石に嘲笑する程には歪んでいないと思います。多分。

ところで対ヘルガの「今回だけ」というのは何回あるんでしょう。「一生のお願い」同様多分何回もあるんだと思うのですが。

お絵描きツール:お絵描き掲示板(しいちゃん)
2004年5月22日