I do love books.

But also detest them all the more.

[01] A Bookworm.



本は好き。

書いてある中身は勿論、
革の持つあの何とも云えないにおい
金や緑、赤など鮮やかな色彩で装飾された文字。
文字一つをとっても写す人が違えば、癖も当然異なってくる。
仮令何が書いてるのか分からない本であっても、
文字の曲がり方などから書き手がどんな人物なのかを想像するだけだって楽しい。

父様の書斎には本棚がある。
天井まで伸びているそれには何百何千といった本が収められている。
几帳面な父様らしい理路整然と整った様はもうそれだけで圧巻。

最近漸く浮遊術を覚えた。
これで高い所にある本も取れるようになった。
勉強すればいずれ中身も分かるようになるだろう。

ロウィナも本が好き。
正確には自分が持っていない知識を得ることが好き。
だから他に媒体があったなら別に本でなくとも構わないのだろうけど、
今はまだそれしかないから彼女は肌身離さず持ち歩いている。

前からそこここで本を読む姿は見掛けていたけれど、
この頃は何かに取り憑かれたようで体を壊さないか少し心配。
「貪るように」というのはきっとああいうのを指すのだろう。

外での読書が好きなのよ、
と出会った頃云っていた通り、
陽気の良い日は専ら中庭の芝生に座り込み、膝の上に本を広げている。
普段滅多に外へは出て来ないのに。

起きた時カーテンの外が明るければ、彼女の家の中庭を目掛けて一目散。
梳る時間すら惜しいというのに、朝食など食べている場合では無い。

この国の空は大方灰色。
一日の天気だって一日が一年であるかのように移ろいやすい。
日光不足にはなりがちではあるけれど、過ごしやすく私は気に入っていた。

それもロウィナと出会ってからは疎ましく感じるようになった。

最初は一緒に肩を並べて本を読んでいたのだけれど、
折角彼女が傍に居るのに目が追うのが活字ばかりというのも勿体無い気がしてやめた。
顔に穴があくからやめて、と云っていた彼女も最近は気にならなくなったようだった。

というより、単純に本に没頭する余り、私の存在が忘れ去られているだけであるようにも見えた。
本のせいで、私は彼女の世界では無の存在となった。

当分の間、本は見たくも無いと思った。






title21.より「01.本の虫」

余りに本ばっかなロウィに置いてけぼりを食わされた感じで、本なんか大嫌い、とかそんな可哀相なゴドたんです。

お絵描きツール:Photoshop7.0
2005年3月24日