螺子

ふと目が覚めた。

別に寝穢い方ではないけれど、いつもはメイドがドアの前に立つ気配を感じ取るまでは目が覚めないのに珍し良い事だと思った。更に珍しい事に、直前に見た夢を微かに覚えていた。昨日父様に連れられて行った家にいたあの女の子が居た。透けるような肌に、綺羅綺羅と光を放つ銀髪、つんと尖った唇に意志の強そうな目。ロウィナ…だっけ。可愛いとか綺麗とかそういうもの以前にずっと一緒に居てくれたら自分は幸せになれるんじゃないか、とか漠然と思ったっけ。

もう一眠りするにはもう外も明るくなって来たようなので、父様の書斎から拝借した読みかけの本を読み終えてしまおうと体を起こした。その時、枕から転がり落ちて来たのか何かがコンッと手に当たった。硝子製の栓だった。酷くシンプルな作りは父様のワイン用の栓らしからぬものだった。そもそもワインの栓ならば自分の寝室の、しかもベッドに落ちている訳も無い。捨ててしまおうか、とも思ったが、逆に微か乍らに興味も湧いたので取り敢えず机の引き出しにしまっておく事にした。

その翌朝。
やはり彼女の夢で目が覚めた。
何かがより具体化したような気がした。

その翌々朝。
彼女の夢と、ドキドキと高鳴る自分の鼓動の音で目が覚めた。

その日の午前中、引き出しにしまっておいた栓を太陽に透かし乍ら指の間にコロコロと転がせ乍ら、それが何なのか思案に暮れていた。そうしている間にも偶にまるで閃光のように彼女の顔が脳裏を過った。

もしかしてこれは自分の彼女への思いが流れ出ないようにする為の栓だったのでは無いだろうか、と漠然と思い始めた。本も手につかない。彼女をもう一目観たい。出来れば一言でも良いから言葉を交わしたい。願わくばずっと一緒に…。下らない欲望だけがどんどん膨らむばかりで、それが気になってちっとも自分の普段の生活が送れない。もどかしい。

抜けた栓ならば嵌める事も出来よう。
再度嵌め込もうと試みたが、どこにも抜けた跡が無い。

嗚呼、彼女こそが自分の運命の人なのだ。
何ら確証も無いのに何故かそう確信した。

栓は……捨てた。

昼食をとったらレイヴンクロー家へ使いをやって彼女に会いに行くとしよう。






頭の螺子が一本抜けてるんじゃない?、って表現があったんでこんなのも良いかな、と。
一度栓が抜けるともう止めどなく想いが溢れ出てくるような、そんな感じ。

1000年前のジェリリ誕生寸前話(笑)

レイヴンクロー家を訪れた際に観たレイヴンクロー家の娘が夢に出てしまう位無意識的乍らも好き、みたいな。ゴドはロウィと違って理屈とか論理とかよりも本能的な直感を信じる人なイメージがあるので、こんな風に頭の螺子が一本抜け落ちる位で丁度好いかな、とか思ってみたりとかして(笑)

ちなみにゴドは長男且つ第一子、ロウィは三女且つ第三子(下に弟が一人)、なイメージ。

きっと財産相続の件で、長子は家、次子は土地、三子は聖職者となる、と云うヨーロピアン的な先入観があるせいです(家と土地を継いでもらう子孫は必要だけど子供の死亡率が高い為、子供の数は多く、上二人以外の良家の子供は親がお金で司教等の聖職者の地位を買って外に出した)。なんか一人っ子って感じじゃないのー。でも現代の話だったらどっちも一人っ子だと良いのにーみたいな。しかしこの設定だと家を継ぐ筈の長子が砂漠とかで剣を振り回したり学校作ったりとやりたい放題で親も嘆いた事ではないのだろうか…とついつい設定を変えたくなります(笑)せめて次男とか(笑)

魔法界の設定は公式設定がほとんど出てい無いので嬉しいような、逆に自由過ぎて困るような(笑)
2005年8月20日